コラム

最近では、春から夏にかけての季節の変わり目に、体の不調を感じる人が本当に増えているように思います。
朝晩は肌寒いのに、昼間は汗ばむほど暑い--そんな寒暖差のある日が続くと、なんとなく体がだるかったり、肩こりや頭痛がひどくなったり。私自身も、「今日はなんだか重たいな」「やる気が出ないな」と感じることが増えた気がします。
こうした不調って、気のせいだと思ってやり過ごしてしまいがちですが、実は最近の研究でも、こういった“気温の差”が私たちの身体に与える影響は無視できないレベルに達していると言われています。
昔よりも気候の変動が激しくなってきた今、この「気温差」が引き起こす不調に、私たちはもっと敏感になるべきかもしれません。
「気温差疲労」とは何か?
人間の身体は、外気温の変化に応じて体温や血流を一定に保つ「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」を持っています。
その調節を担っているのが、「自律神経系(autonomic nervous system)」です。
寒いときには血管を収縮させて熱を逃さないようにし、暑いときには血管を拡張させて汗をかき、熱を逃がします。
このような調整が繰り返されることで、自律神経は常にストレスに晒された状態になり、やがてバランスを崩してしまいます。
これが、「気温差疲労」の本質です。
自律神経のバランスが崩れると…
自律神経は、交感神経(緊張・活動)と副交感神経(リラックス・回復)の2つから構成されており、このバランスが乱れると、以下のような身体症状が出やすくなります。
慢性的な疲労感や倦怠感
頭痛・めまい・耳鳴り
冷え・のぼせ・手足のしびれ
胃腸の不調(食欲不振、便通異常)
精神的な不安感・集中力の低下
特に、寒暖差による血管の急激な収縮・拡張は循環器系への負担にもなりやすく、高齢者やストレスが多い方は要注意です。
科学的な視点から:寒暖差と自律神経活動
近年の研究では、日内気温差が7℃を超えると、自律神経活動のバランスが顕著に変動することが報告されています(※1)。
また、慶應義塾大学医学部の研究グループは、気温の急変が心拍変動(HRV)の指標に影響を与え、交感神経優位状態が持続しやすくなるとしています(※2)。
これはつまり、外部環境の影響が、明確に神経系の生理指標に現れるという科学的な裏付けです。
春〜夏を快適に過ごすためのセルフケア
以下の3つのケアは、日常的に取り入れやすく、自律神経の調整に効果的です。
① 光と深呼吸で「交感神経」を自然にON
朝起きてすぐに自然光を浴びることで、視交叉上核が刺激され、体内時計がリセットされます。
そこに*腹式呼吸(4秒吸って、6秒吐く)*を合わせることで、交感神経のスムーズな立ち上がりが促されます。
② 就寝前は「副交感神経」を意識してクールダウン
夜は38~40℃のぬるめの入浴で深部体温を一時的に上げ、入浴後の体温低下と共に眠気を促進。
この体温変化が、副交感神経を優位に導きます。アロマや照明の工夫も◎。
③ 頸椎アプローチで脳幹周辺のリラックス
第1頸椎(環椎)周辺は、脳幹(延髄・橋・中脳)を支える重要部位。
この領域の筋緊張が強いと、迷走神経などの副交感神経系の働きが阻害されやすくなります。
軽く温めたり、ソフトな手技やセルフストレッチでリリースすることで、副交感神経の活性が促されると言われています。
まとめ
春から初夏にかけての「なんとなく不調」の正体は、実は“気温差疲労”かもしれません。
セラピストとしては、こうした季節特有の自律神経の乱れを念頭に置きながら、施術やカウンセリングを行うことが、より的確なケアに繋がります。
セルフケアの提案や、施術の中に「自律神経へのアプローチ」を意識的に取り入れることが、クライアントの満足度にもつながるでしょう。
参考文献
※1:環境省「熱中症環境保健マニュアル(2022年版)」
※2:Keio University School of Medicine, Autonomic Nervous System Research Group. Thermal Stress and HRV in Transitional Seasons. J Physiol. 2021.
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