~「痩せたのに太りやすくなる体」って本当?プロの整体セラピストが伝える“安全に痩せる方法”~◆はじめに:夏は痩せる? その思い込みが、秋冬のリバウンド体質をつくる夏は薄着で体型が気になる季節。だからこそ「この時期に痩せたい!」と食事制限や運動に力を入れる人も多いでしょう。しかし実は、「夏のダイエット」こそが秋から冬に太りやすくなる体質をつくってしまうということをご存じでしょうか?最新の研究によれば、過度なカロリー制限や水分不足が代謝を抑制し、ホルモンバランスを崩しやすく、結果的に秋以降にリバウンドしやすい"脂肪をため込みやすい状態"を引き起こすことがわかっています。さらに、冷房依存の生活、自律神経の乱れ、たんぱく質不足などが重なり、"一見痩せたけど実は痩せにくい" 体質に変化してしまうケースが少なくありません。本コラムでは、整体セラピストの視点から、代謝・栄養・自律神経・姿勢・東洋医学などの観点から「夏ダイエットの落とし穴」を医学的に読み解き、骨格調整や経絡セラピーを含む“整えるダイエット”の可能性を探ります。1|【代謝が落ちる!?】夏に痩せると、秋に太りやすくなるのはなぜか?夏に体重が落ちると、嬉しい反面、体は「省エネモード」に入ります。これはメタボリック・アダプテーション(代謝適応)と呼ばれ、カロリー制限によってエネルギー消費を減らし、脂肪を蓄えやすい体に変化する生理的反応です。また、最新の肥満生理学では「Summermatter cycle(サマーマターサイクル)」という概念があり、カロリー制限により代謝が低下し、その後の食事再開で脂肪が効率的に蓄積される"キャッチアップファット現象"が生じるとされています。つまり、夏の短期間の減量は、秋冬にかけて脂肪優位のリバウンドを引き起こしやすいと言えるのです。2|汗をかけば痩せる?医学的には逆効果の場合も「汗をかいたから痩せた」と思いがちですが、発汗で失われるのは主に水分と電解質であり、脂肪燃焼とは関係ありません。1kgの脂肪を燃やすためには約7200kcalの消費が必要ですが、軽い運動やサウナでこれを消費することは現実的ではありません。さらに、脱水状態になると、体内の血液粘度が高まり、ミトコンドリアの酸素利用効率が低下し、代謝が落ちます。これは特に女性に多く見られ、貧血気味の方や低血圧傾向にある方は注意が必要です。加えて、発汗によるナトリウムやカリウムの喪失が筋肉の収縮や神経伝達に悪影響を与え、疲労感や集中力低下、慢性のだるさを引き起こすことも。3|“食欲がないから痩せる”の落とし穴:栄養不足が筋肉を削る夏場は暑さで食欲が落ちるため、「食べない=痩せる」と捉えがちです。しかしこれは筋肉量の減少による代謝の低下を招く典型的なパターンです。たんぱく質、鉄、亜鉛、ビタミンB群が不足すると、筋合成が進まず、結果的に基礎代謝が下がります。また、女性ホルモンのバランスを保つためには、これらの栄養素が不可欠。PMSの悪化、月経不順、肌荒れ、脱毛などの症状が出てきた場合、単なる"痩せ"ではなく「不健康な痩せ方」に進んでいる可能性が高いのです。4|冷房とストレスがもたらす自律神経の乱れと代謝ブレーキ現代の夏は屋外の高温と、室内の冷房環境が極端に分かれ、自律神経にとって大きなストレスとなります。交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず、睡眠の質が低下し、ホルモン分泌にも悪影響を及ぼします。特に注目すべきは、レプチンとグレリンという食欲ホルモンの働きです。これらのホルモンが乱れると、満腹感が得られにくくなり、間食・夜食が増える傾向に。自律神経の乱れは、体温調整機能や内臓の血流にも影響し、結果的に脂肪燃焼効率の低下へとつながります。5|骨格・姿勢の乱れが内臓と代謝に与える影響ダイエットの成功には、実は「姿勢」と「骨格バランス」も大きなカギを握っています。骨盤が前傾・後傾していたり、猫背・巻き肩があると、内臓が圧迫され、消化・吸収機能や呼吸機能が低下します。胸郭の可動性が低いと酸素摂取量が下がり、有酸素代謝の効率も低下。また、腹圧の低下は腸のぜん動運動や排泄力にも影響を与えるため、便秘→むくみ→体重増加という悪循環を招くことも。整体セラピストとしては、クライアントの骨格の歪みや姿勢パターンを評価し、それに応じた調整を行うことが根本的な代謝アップに貢献します。6|東洋医学の知恵:経絡セラピーで「巡り」を整える東洋医学では、「気・血・水」の流れが体調と体型を左右すると考えられています。夏は汗で水分を失いやすく、また「心(しん)」の働きが活発になるため、不眠・イライラ・動悸といった不定愁訴が出やすくなります。経絡セラピーでは、「脾経」「腎経」「肝経」「心包経」などを活性化させることで、内臓の働きやホルモンバランス、自律神経にアプローチできます。特に腸の働き・むくみ・冷え・睡眠の質などに課題を抱えるクライアントには、夏場の経絡ケアが効果的です。施術により気血水の巡りが整えば、自然治癒力が回復し、「太りにくく、痩せやすい」体質づくりが可能になります。7|セラピストが提案する「整えるダイエット」実践ステップStep1:栄養を“整える”高たんぱく質&鉄・亜鉛・ビタミンB群を意識的に摂取納豆、豆腐、卵、鶏胸肉、レバー、味噌、ぬか漬けなどを活用経口補水液・麦茶+塩で脱水&ミネラル補給も忘れずにStep2:運動を“整える”室内でできる自重スクワット・体幹トレ・ストレッチ朝の散歩やラジオ体操など、リズムを意識した生活習慣呼吸法や骨盤底筋トレーニングも積極的に取り入れるStep3:骨格と巡りを“整える”姿勢評価からの骨盤・胸郭調整による代謝向上経絡指圧や頭蓋調整で自律神経・ホルモン調整腸もみ・腹部調整による便通改善・むくみ解消◆セラピストの視点で届けたい、「体調を整えて痩せる」価値ダイエットの真の目的は「ただ痩せること」ではなく、「健康的に美しく変わること」。数値だけを追いかけるのではなく、呼吸・睡眠・腸内環境・ホルモン・姿勢といった身体全体のコンディションを整えることが、結果として"痩せ体質"をつくります。そして、それを叶える力を持っているのがセラピストです。施術、指導、寄り添い、観察──そのすべてを駆使して「整えるダイエット」を提供できる存在として、クライアントに信頼されるパートナーとなりましょう。「整えることは、美しさへの最短ルート」。セラピストとして、その価値を広めていくことが、次世代の健康づくりの鍵となります。📚 参考文献リスト(プレーンテキスト形式)Rosenbaum, M., & Leibel, R. L. (2010). Adaptive thermogenesis in humans. International Journal of Obesity, 34(Suppl 1), S47–S55. (ダイエット後の代謝適応についての研究)Summermatter, S., et al. (2013). The Summermatter cycle: Adverse effects of weight cycling on skeletal muscle thermogenesis. Obesity Reviews, 14(9), 682–692. (ダイエットによる筋肉代謝とリバウンドの関係)Sawka, M. N., & Pandolf, K. B. (1990). Effects of body water loss on physiological function and performance. Journal of the American College of Nutrition, 9(5), 557–562. (脱水が代謝・体力に与える影響)Friedl, K. E., et al. (2000). Physical performance and metabolic recovery after weight loss in Army Ranger candidates. Military Medicine, 165(7), 515–522. (筋肉量低下と代謝回復の関係)Romero-Corral, A., et al. (2010). Modulation of leptin and ghrelin in relation to sleep deprivation and circadian misalignment. International Journal of Obesity, 34(5), 860–869. (ホルモンバランスと睡眠・自律神経の関連)厚生労働省.(2020年) 『日本人の食事摂取基準(2020年版)』. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html (栄養素の摂取基準ガイドライン)日本自律神経学会 編(2018年) 『自律神経と生活習慣病』南江堂. (冷房やストレスが自律神経に与える影響)医歯薬出版 編(2020年) 『標準東洋医学』医歯薬出版. (気血水や経絡の調整に関する基本書)岸田直樹(2020年) 『筋肉と代謝の医学』講談社ブルーバックス. (筋肉量と基礎代謝の関係をわかりやすく解説)日本東洋医学会(2020年) 『東洋医学と代謝調整』特集号. 日本東洋医学雑誌, 第71巻. (経絡施術による代謝改善の報告を含む特集)